月刊「新医療」2016年2月号にて、病院設備における配管対策としてNMRパイプテクター®が掲載されました。以下、本紙掲載内容一部抜粋です。
病院に限らず、建物や設備は経年等により劣化する宿命にある。 その修繕に多額の経費と時間を要することは言うに及ばない。それゆえ経営者(所有者) は常々、コストを抑制しつつ確実な成果が期待できる修繕方法を考えておく必要があるだろう。
病院設備の中で、「配管」を題材に、事業への影響が少なく、経営にも優しい修繕方法について解釈する。
建物の寿命は、構造体や維持管理、人為的な要素などに左右されるため定義づけが難しいのですが、病院の場合、
24時間使用を義務付けられる建物ゆえ、他の建築物よりも物理的に短命になりがちなのは確かです。
また、目まぐるしく変化する医療ニーズや社会的ニーズ等に対応する必要があることから、比較的短期間のインターバル
で建物のリニューアルが求められる状況ともなりがちです。
その建物整備事業においては、柱、梁などの構造体よりもむしろ電気・空調・衛生関連等の付帯設備のほうが課題となるでしょう。
構造体が一般的に40~50年という耐久年数であるのに対して、設備は15年から20年ごとに大規模なリニューアルが必要とされているからです。
そこで今回は、病院設備の中でも特に過酷な使用環境環下にある「配管」に焦点を当てて、設備をなるべく長期にわたり安全・快適に使用できるようにするための工夫について考えてみたいと思います。
病院の場合、配管関連で特に問題となるのは「赤錆」ではないでしょうか。医療設備ゆえ配管内の錆防止を目的とする薬剤が使えないために内部が腐食しやすく、それが原因で水道水に赤錆が混じることがあります。
赤錆はやがて配管の肉厚を減少させ、漏水につながります。病院内での水漏れは致命的といえます。
その対策として、高圧水などで配管内を洗浄し、計画的に赤錆を落とすという方法がありますが、抜本的な解決策にはなり得ません。
この方法で赤錆を除去した箇所は、塩化ビニールや亜鉛メッキなどの保護膜が無い金属部分が水と接触することになるため、腐食がさらに進行してしまう可能性があります。
それを食い止めるために配管内の洗浄を繰り返すと、配管の強度低下を招き、漏水の原因になりかねないからです。
赤錆があまりにも酷い時は、配管の更新工事が必要になるケースも考えられます。
部分的に配管更新をする場合はともかく、施設内の全面更新の場合は、建物規模によって修繕費が数億円単位に達することもあり得ます。
大規模修繕などの負担をかけずに赤錆の発生した配管を再生する対策として、ここでは2つの方法を紹介します。
1つは、腐食した給水管や配水管を交換することなくクリーニング(研磨)とライニング(腐食や摩擦防止を目的に、設備内部に他の素材を貼り付ける処理)により、赤錆の除去・再発を防止をするという方法です。(図1)。 具体的には赤錆が発生している配管内に珪砂等の研磨剤を高速気流とともに送り込み、その圧力で赤錆を落としながら内表面を研磨します。その後、エポキシ樹脂などの工業材料を配管内に圧送し、配管の内表面をコーティングすることで赤錆の再発を防ぐというものです。 この方法は一般的に「配管更生」とよばれています。最近は技術面や材料等の工夫により得られる工期短縮や費用低減などの効果を、各社が競うようになっています。
いわゆる「防食」に分類される技術も、配管の赤錆劣化や対策に使われています。その方法は、
「空気を遮断する」という考え方の手法から、光学式(オゾン洗浄)、磁気式、(磁気+セラミックス)など多岐にわたります。
そのうち、医療分野でもおなじみのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)を応用した核磁気式のメカニズムについて解説します。(図2)
原理を簡単に説明すると、水素の原子核の核磁気共鳴であるNMR現象により、赤錆水の解消および発生防止を図るというものです。
この手法は「赤錆を『除去する』のではなく、NMR現象からくる還元作用により、赤錆を『黒錆に変える』ことで、配管内に堅固な層を形成する」というものです。
水素の原子核の共鳴によって赤錆が電子を得て、結果、体積が赤錆の1/10の黒錆に還元されます。この黒錆の層が配管内の強度を維持する作用を発揮し、給水管や配水管の延命を図る効果が得られるとされています。
採用事例では、給水管に赤錆が発生し劣化が進行したため、配管の部分更新で対応していました。しかし一部に赤錆の発生が続いていたことから、この還元作用による「配管更生装置」を設置した結果、断水を伴うことなく全面的に配管の交換修繕をする場合の1/10の費用で済みました。また、配管外側からの腐食の影響を受けなければ、以降の更新は不要になったとの事です。病院の配管は当然、各施設で異なります。それゆえ、配管修繕が必要になった際の費用対効果も、施設ごとに違ってくるのは自明です。したがって、綿密な事前調査を踏まえた上で最善の手法を選択する必要があることは、いうまでもありません。
■岩堀幸司(いわほり・こうじ)
1947年横須賀生まれ。千葉大学大学院修士課程修了。日建設計にて設計部長、理事、部門副代表など歴任。現在NPO活動、大学講師ほか医療施設アドバイザーとして活動。医療福祉施設として聖路加国際病院、国立成育医療センターなどの設計に関わってきたほか、関連施設として萬有製薬つくば研究所など生物研究所を多数手がける