更新:2020年5月11日
東京・丸の内、日比谷通りに面して位置し、わが国初の本格的西洋式劇場として1911(明治44)年に開場された帝国劇場。 「帝劇」の通称で知られる劇場設立の構想が具現化した背景には、当時さまざまな分野に影響していた欧化主義のひとつである演劇改良運動があり、発起人の中心として次期一万円札の顔となる渋沢栄一も名を連ねていました。 設計者は横河民輔、ルネサンス風のフランス様式を模した造りで、全階椅子席、ロビーや食堂、喫茶室も備えており、江戸時代からの「歌舞伎小屋」イメージを一新するものでした。 歌舞伎を上演する一方で翻訳劇や創作劇を並行して取り上げ、また帝国劇場付属技芸学校を設立して女優の養成にも取り組みました。 さらに、イタリア人音楽家ローシーを招いてのオペラ・バレエの上演、シェークスピアをはじめとする外国劇とオペラを続々と上演するなど、まさに芸術の国際化が花開いていきました。 「今日は帝劇、明日は三越」という当時の広告キャッチコピーは流行語にもなり、消費時代の幕開けを告げるものとなりました。
NMRパイプテクター®を導入した「帝国劇場」
劇場のイメージ
しかし、そんな帝国劇場を1923(大正12)年、関東大震災が襲います。 高い耐震性と防火性を誇った帝国劇場は激しい揺れにも倒壊を免れ、震災発生当初は火災の被害もなかったのですが、数時間後に警視庁方面から出た尋常ではない火災の飛来を受け、悲運にも外郭を残して焼け落ちてしまいました。 それでも横河民輔の改修によって震災の翌年に再開され、「大正帝劇」として再び賑わいを見せた帝国劇場は、その後、不況による経営難や太平洋戦争中の閉鎖などの局面を経て1964(昭和39)年、都市高層化の波で取り壊されます。 その間、演劇興行から離れて洋画の封切り館として親しまれた時期もあり、大型映画シネラマの日本初公開も帝国劇場でした。 1966(昭和41)年に完成した現在の帝国劇場は、複合ビルの一部の劇場として生まれ変わり、開場記念公演の『風と共に去りぬ』を6カ月のロングランでヒットさせるなど、その後も現在に至るまでミュージカルや大型娯楽劇を柱に日本の文化・芸術の中心的劇場となっています。 とくにミュージカルの公演が盛んとなり、『屋根の上のヴァイオリン弾き』『マイ・フェア・レディ』『王様と私』『ラ・マンチャの男』といったブロードウェーの名作ミュージカルの上演を続けるとともに、『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などのハイテクを駆使した演出が話題の大型ミュージカルも上演してきて、「日本ミュージカルの聖地」とも呼ばれています。 さて、そんな帝国劇場にも年月が流れ、築34年を迎えた2000(平成12)年、建物の配管の腐食を防止し、更生させる目的からNMRパイプテクター®が導入されました。
ビルなどの建築物には空調冷温水管や給水管など何種類もの配管が巡らされており、使用されていくうちに配管の内部には赤錆(あかさび)という錆が発生し、配管を浸食します。 この赤錆は水に溶け、鉄をボロボロに腐食していく性質を持つため、さまざまな配管の劣化問題を引き起こします。 たとえば赤水や赤錆閉塞、漏水や配管接合部のネジ山の脱落などのトラブルです。 そして、こうした「赤錆問題」を見事に解決してくれるのが、日本システム企画の「NMRパイプテクター®」なのです。 配管の劣化問題の解決策としてNMRパイプテクター®が多くのお客様に選ばれている理由は、その優れた機能にほかなりません。 ではいったい、どのようにして厄介な配管の劣化問題を解決してくれるのか、NMRパイプテクター®の仕組みをご紹介いたします。 前述の通り、配管内に付着した赤錆はさまざまなトラブルの原因となりますが、NMRパイプテクター®は、水の自由電子(水和電子)を利用することにより、配管内の赤錆を黒錆という別の物質に還元することができるのです。 この機能を利用して、赤錆による配管問題を解決するだけでなく、配管を更生し続けていくことができるというわけです。
配管内の赤錆防止装置「NMRパイプテクター®」
鉄をコーティングする黒錆の例「南部鉄瓶」
では、黒錆とはどんな物質なのでしょうか?
黒錆は水に溶けず、体積が赤錆の1/10以下という固い結晶で、鉄の表面に緻密な皮膜を形成することで鉄を赤錆腐食から守ることができます。
この性質を生かして、南部鉄瓶や中華鍋など鉄のコーティングに利用されているほか、はるか昔の奈良・平安時代の神社や寺の釘や蝶番にも使用され、何百年間も赤錆から鉄を守ってきました。
NMRパイプテクター®によって赤錆を黒錆に還元することで、水に溶け出していた赤錆が減少し赤水が止まります。
また、体積が小さいため、赤錆閉塞を改善させることもできます。
「わざわざ黒錆に還元しなくても赤錆を取り除けばいいのでは?」という意見があるかもしれませんが、実は従来の主な赤錆除去方法の配管洗浄では、赤錆を除去する際に配管自体が傷つき劣化してしまいます。
しかし、NMRパイプテクター®は、赤錆をより体積の小さな黒錆に変化させることで、「配管を傷つけることなく」「配管自体を強化しながら」赤錆閉塞を改善していくことができるのです。
さらに、NMRパイプテクター®を用いた配管更生の特長として挙げられるのが、効果の持続性です。
日常的な水の使用量(1人あたり約200~300L/日)があれば、NMRパイプテクター®の赤錆防止・更生効果は40年以上も持続されます。
これはつまり、現在使用している既存の配管を、建物の寿命まで延命して使い続けられるということです。
事実、配管の寿命を40年以上延命することができた事例が数多くあります。
また、NMRパイプテクター®は配管の外側に設置するだけで恒久的に雑菌の発生を抑え、ぬめりや腐敗物、水垢などの汚れを防ぐこともできます。
従来の赤錆除去方法である配管洗浄では、洗浄後2〜3年でぬめりや雑菌の繁殖が再発するため、3〜4年毎に洗浄を繰り返す必要がありました。
ですから洗浄のたびにコストがかかり、さらに配管洗浄は赤錆腐食した部分をそぎ落とすため、配管の劣化を早めてしまっていたのです。
2000(平成12)年、帝国劇場の配管更生にNMRパイプテクター®が採用されました。
帝劇ビルでは自前の熱源設備を保有して空調を実施しており、機械室はいちばん深い場所である地下6階にあります。
熱源設備は、蒸気ボイラーやターボ冷凍機などが中心で、冷却塔は屋上(地上10階相当)に集中配置されています。
劇場という特性上もっとも重要となる「静粛性」を配慮し、電動機を搭載した設備や機器類を最深部である地下6階に集中配置するというのは、設計者の意図を雄弁に物語っているといえるでしょう。
現在では珍しい、鉄筋コンクリートの中に水系の配管を埋設配置している構造も、単に強度を高めるためだけではなく、静粛性をできるかぎり重視したことの表れと考えられます。
この帝劇ビルですが、経年劣化しやすい水系配管など各部の改修やメンテナンスはかなりの頻度で実施されてきたとのことです。
ただ、露出配管や機械室内設備は何とかなっても、埋設された配管には手を出すことができませんでした。
そこで、日本システム企画の優れた製品に白羽の矢が立ったというわけです。
2000(平成12)年から2002(平成14)年にかけて、3回に分けてNMRパイプテクター®による水配管保護延命工事を実施しました。
導入による効果は絶大で、今年築後54年になりますが配管内の赤錆の発生は見事に抑制され、NMRパイプテクター®の設置前に発生していた一部漏水も、NMRパイプテクター®設置後は過去20年一度も発生がない事から、赤錆の黒錆化が証明されました。
これにより日本の演劇文化の象徴ともいえる帝国劇場の快適な劇場環境の維持に貢献することができました。
ミュージカルのイメージ
東京・丸ノ内のにある「帝国劇場」
かくして、あの帝国劇場(帝劇ビル)の配管更生を成し遂げ、高機能を証明して見せたNMRパイプテクター®。 その実績は国内にとどまらず、なんと英国バッキンガム宮殿をはじめ、大英博物館、スコットランド王立銀行など、歴史ある世界的な施設でも数々の導入実績を残しています。 ですから、配管の劣化問題に困っているものの、様々な理由であきらめかけているビルオーナーの方々には、ぜひいちど、NMRパイプテクター®をご検討いただきたいと思います。 赤錆は、除去するのではなく、黒錆に還元する。この発想の転換こそが、あなたのビルの寿命を延ばすのです。