更新:2020年7月2日
NMRパイプテクター®は配管内の赤錆防止・配管延命装置として多くの建物に導入されていますが、新たに水道事業でも注目を集めるようになりました。
日本水道協会の水道研究発表会で、横浜市水道局による実証実験の結果が報告されたためです。
水道分野におけるNMRパイプテクター®の可能性について、日本水道新聞に取り上げられましたので、今回はその記事の内容をご紹介いたします。
水道分野におけるNMRパイプテクター®の可能性
2013年11月14日発行「日本水道新聞」にて掲載
NMRパイプテクター®は、配水管の赤錆を防止する装置として、マンションや病院、歴史的な建築物など4,300棟以上に導入されています(2022年3月時点)。
日本のみならず世界からも厚い信頼が寄せられており、イギリスのバッキンガム宮殿にも設置されています。
これまでNMRパイプテクター®は建物内の給水管の維持メンテナンスのために設置されることが主でした。
一方で、2013年に開かれた日本水道協会の水道研究発表会では、NMRパイプテクター®の使用によって水道水の塩素濃度低下を抑制できるとする実証実験の結果が、横浜市水道局より発表されました。
その内容は、鶴見配水池付属公舎内の給水管でのNMRパイプテクター®の設置前と設置後での残留塩素濃度の比較を行い、設置前は主管から10M離れた場所のテスト配管内で塩素濃度0.5PPM、60M離れた地点で0.3PPM、135M離れた地点で0.2PPMと距離が長くなる程、配管内の赤錆の為に残留塩素濃度が減少していました。
NMRパイプテクター®を設置して試験開始から4ヵ月後の結果では、設置場所の主管から10M離れた場所の塩素濃度は0.6PPMに対し、60M離れた地点でも0.6PPMと塩素濃度の減少はほとんど無くなりました。また、135離れた地点の塩素濃度も0.55PPMと上昇し、残留塩素減少幅もわずか0.05PPMとなっています。
この試験結果からNMRパイプテクター®の設置により、塩素濃度低下の抑制効果についての立証がされました。そのため、水道事業にもNMRパイプテクター®の活躍の場が広がるのではないかと期待されています。
私たちがいつも使用している水道水は、塩素によって消毒されています。
塩素は、水源で採れた水に含まれる病原菌の殺菌や、ウィルスの不活化の作用があり、さらに残留塩素として殺菌効果を各家庭の蛇口まで維持しています。水道水をそのまま飲むことができるのは、この残留塩素のおかげです。
水道局から各家庭に届くまで水道水の中に十分な量の塩素が残留していることが、水道の衛生を保つ上で必要不可欠なのです。
塩素により消毒されている水道水
赤錆劣化した配管内イメージ
1970年代に全国の水道が整備され約半世紀が経ち、現在では水道配管の老朽化が問題となっています。
水道配管の老朽化によって道路冠水などのトラブルが報告されています。
また水道配管が赤錆に浸食されることで、雑菌が繁殖しやすい状態となり、衛生的な水を各家庭に届けるために、より多くの塩素を使用する必要が出てきている地域もあります。
このような問題を解決するため、また耐震などの理由から、全国の水道事業体では水道配管の敷設替えを急いでいます。
敷設替えには多くの財源が必要となりますが、特に地方では給水人口が少ないあるいは人口が減っている地域が多く、十分な収入を確保できないために、敷設替えへの道筋が見えていない事業体も増加しています。
水道事業体として、水道水の衛生保持はとても重要な使命ですが、残留塩素濃度を維持するために、捨水をしている水道事業体もあります。
水道使用量が少ない配水地域では、水が停滞しやすくなります。
水が停滞すると、消毒のために塩素を多く消費します。
残留塩素が検出されない場所では、衛生保持のために残留塩素が検出されるまで水を捨てることがあり、これを捨水と呼んでいます。
東北地方のある事業体では、捨水量が年間およそ5億円に相当するほどです。
水道水を衛生的に保つための捨水によって水道事業の財政が厳しくなり、水道配管の敷設替えがさらに遠のき、配管内の衛生状態が悪化するという負のスパイラルに陥りつつあるのです。
5億円分の水を捨てている…!?
配管内の赤錆防止装置「NMRパイプテクター®」
地方では十分な財源がないため、水道配管の敷設替えがなかなか難しい状況です。
しかしながら、NMRパイプテクター®は、水道配管の敷設替えに比べると10分の1~20分の1程度のコストで設置でき、赤錆の発生を防止し、残留塩素濃度の低下を防ぐ事が可能です。
大都市では十分な財源があり、長期計画のもと水道配管の敷設替えを実施していく事が可能ですが、交通量や交差点の数が多く開削工事が難しい場所などが数多く存在します。
NMRパイプテクター®は、水道配管の外側に取り付けるだけなので、設置するための工事を最小限に抑えることができます。
NMRパイプテクター®なら開削工事の必要がなく、都市部でも設置可能!
NMRパイプテクター®の配管内の作用
NMRパイプテクター®は配管内側に発生した赤錆を、鉄を保護・強化する性質をもつ黒錆に変え、水道管の劣化が引き起こす様々な問題を解決し、残留塩素濃度低下を防止します。
NMRパイプテクター®が実力を余すところなく発揮できれば、寿命があと10年という水道配管の寿命を30~40年へと延命する事も可能です。
そのためには、水が一方向に流れることと、水の使用量が重要な要素となります。
国道沿いなど水が一方向に供給されるような水道管路に設置する事が望ましいのですが、末端の行き止まり管でもその先に住宅が密集しており、水の使用量がある定程度見込める場合は有効です。
一方で、日本の水道管路は碁盤の目のように張り巡らされており、向き・速さともに水の流れが場所によって大きく変わるため、それらを正確に把握する事が難しいというのが実情です。
NMRパイプテクター®がその防錆効果を十分に発揮するためには、事前にモニタリングを行い、その結果を踏まえた上で、設置場所・設置方法を慎重に検討する必要があります。
日本システム企画株式会社は全国の営業拠点やパートナー企業とも連携しているため、そういった各地域の実情に柔軟に対応をすることが可能です。
日本システム企画は全国各地に支店営業所があります
NMRパイプテクター®を導入した「バッキンガム宮殿」
NMRパイプテクター®は、給水管などの屋内配管では、日本だけでなくイギリスのバッキンガム宮殿をはじめ数多くの実績があります。
しかし、水道分野では全く新しい技術です。
まずはNMRパイプテクター®の特性に適した場所に設置する。
そして次の段階では、水の使用量が少ない箇所でどう活用していくかなど、実情に合わせた技術開発が必要不可欠です。
この技術開発は、水道事業体と強く連携して研究を進めて行かなければなりません。
日本システム企画株式会社の熊野社長は「まずは設置してみていただき、NMRパイプテクター®の効果を確かめてほしい。効果検証のための設置は無償で提供いたします。一緒に検証して効果が認められれば、その上で採用していただくというスタンスで臨んでいく考えです。」と話します。
国・事業体レベルでは、東南アジアなどの発展途上国における水インフラを支援する動きがあります。
そういった国々の多くの地域では、水道配管が赤錆により劣化し、雑菌が繁殖した状態となり、蛇口から出る水が飲用に適していません。
水道配管の更新を行うことができればよいのですが、多くの発展途上国は水道配管更新のための費用を捻出するのが困難な状況にあります。
NMRパイプテクター®であれば水道配管更新に比べると1/10~1/40とはるかに安価に、衛生的な水を提供可能です。
NMRパイプテクター®の導入を進めて行けば、各国の水道事情が改善する未来が見えてくるかもしれません。
このような取り組みは、発展途上国の水インフラ支援をする立場である日本の国益にかなうものであると熊野社長は話します。
日本システム企画株式会社が独自に開発した、NMR工法で赤錆問題を解決するNMRパイプテクター®は、これまで建物内給水管などの配管メンテナンスの市場で高く評価されてきました。
加えて横浜市水道局による実証実験では、水道事業でも既存の水道配管の延命を行いつつ、残留塩素濃度の低下防止に役立つ可能性がある事が示唆されました。
NMRパイプテクター®の活躍の場は今後ますます広がっていきそうです。