更新:2020年7月30日
今回ご紹介する新宿の有名書店が入るこのビルは、いつも多くの人で賑わっています。 今から十数年前、空調冷温水配管の老朽化による赤錆対策に悩まされていました。 天井裏にアスベストを使用しているため、配管更新工事を行う事が実質的に不可能だったのです。
新宿の有名書店が入るビルディングがある東京・新宿三丁目
新宿の有名書店は東京・新宿三丁目で創業し、今年(2020年現在)で93年となる老舗書店です。 創業当時は従業員5名の個人書店でしたが、今では日本全国に71店舗を持ち、世界9ヶ国に30店の店舗網を構築しています。 また、全国の大学や研究機関と取引があり、和洋書籍・雑誌の販売から大学の蔵書管理システムの構築、英文校正・学術翻訳まで幅広く、学術研究支援サービスの提供を行っています。
新宿の有名書店は、出版やホールの運営、芸術創造の発展への寄与を目的とした演劇賞、寄席の開催など、文化的事業にも貢献しています。 書店は、文化・芸術・情報の発信拠点として地域社会に愛され発展を遂げ、現在では世界各国の店舗で日本の書籍を販売するなど、文化・芸術・情報をグローバルに発信する存在です。
書店新宿本店があるビルディングは、書店・劇場・画廊・物販や飲食のテナントを有する、地上9階・地下2階の鉄骨鉄筋コンクリート造の複合ビルとして1964年に完成しました。 設計は戦後の日本建築界を代表する建築家で、ル・コルビュジエに師事した前川國男氏が担当しています。 前川氏が「何か一息つける場所を造りたい」と考えて設けた1階の広場は、現在も待ち合わせをする多くの人々に利用されています。 ビルディングは新宿のランドマークとしての役割を果たしており、東京都の景観づくりにおいて重要であるとの評価を受け、2017年に東京都選定歴史的建造物に選ばれています。
ビルディングの空調冷温水配管は亜鉛メッキ鋼管を使用しています。亜鉛メッキ鋼管の一般的な耐用年数は25年と言われています。 NMRパイプテクター®が導入された2005年当時、ビルディングは築41年で配管の耐用年数は大幅に超えており、配管内の赤錆によって近い将来必ず配管更新が必要でした。 しかし、最も配管更新工事を難しくしたのがアスベストの問題です。 ビルディングの天井裏にはアスベストが使用されているため、空調冷温水配管の更新工事は実質的に不可能な状況でした。
アスベストとは天然の非常に細い繊維状のケイ酸塩鉱物で、石綿とも呼ばれます。 アスベストの歴史は古く、古代ローマでもランプの芯として使用され、日本では江戸時代に平賀源内が秩父山中で発見した石綿を布にして幕府に献上した記録が残っています。 20世紀に入ってからは、建物の断熱材として大量に使用されました。 しかし、1970年代に入ると人体への影響が世界的に問題となりました。 日本では2006年にアスベストは一部の製品を除き使用禁止となり、現在は原則として製造等が禁止されています。 アスベストは建築物に使用されていることが直ちに健康被害につながるのではなく、解体などで飛び散り、呼吸器官を通して体内に入り込むことで健康被害が起こります。 数十年もの長い潜伏期間の後、肺線維症や肺がん、悪性中皮腫など死に至る恐ろしい病気をもたらすのです。
配管更新工事では、壁や天井に穴をあけて配管を露出させて交換を行います。 そのため、アスベストを使用しているビルディングで配管更新工事を行うことは大変なリスクを伴います。 とはいえ配水管の老朽化に対して、何らかの手は打たねばなりません。 そこで大型建築物の設備設計・施工を行うダイダン株式会社は、空調冷温水配管の老朽化問題に、配管更新工事ではなく全く違うアプローチの提案をしました。 日本システム企画株式会社が独自に開発した、配管更生装置NMRパイプテクター®の設置です。
総合設備企業のダイダン株式会社が選んだNMRパイプテクター®-NMRPT- ダイダン株式会社は、1903年に大阪で創業した大型建築物の電気・通信、空調、給排水衛生設備の設計・施工を行う歴史ある総合設備企業です。 創業時から現在に至るまで、日本全国の歴史に名を残す多くの建築物の施工に携わってきました。 その施工例として、日本銀行本店、日本武道館、関西空港旅客ターミナルビル、羽田空港第二旅客ターミナルなどが挙げられます。
断熱材イメージ
配管内の赤錆防止装置「NMRパイプテクター®」
配管の老朽化対策の根本的な解決方法は配管更新ですので、通常であればダイダン株式会社は配管更新工事を提案したでしょう。 しかし、ビルディングはアスベストが施工されているため、必ずその除去作業が必要です。 それには大きなハードルがありました。 1つ目に周辺への影響です。 工事中にアスベストが飛散する危険があるため、周囲の建物への使用制限が必要です。 しかし、ビルディングは新宿の中心に位置するため、それは容易な事ではありません。 2つ目に、施設の休業期間の長さです。 アスベストが施工されていない建物で配管更新を行うとしても、通常3~6ヶ月の施設休業が必要です。 ましてやビルディングはアスベスト除去作業が必要なため、休業期間はさらに延びます。 3つ目に、費用の問題です。 アスベスト処理費用は配管更新費用の2~3倍かかります。 アスベスト除去が不要な通常の配管更新工事でもその費用は高額ですので、ビルディングの場合、莫大な額となります。
NMRパイプテクター®は、1系統につき1つの装置を配管が露出している部分に取り付けるだけで設置が完了するため、そもそもアスベストの除去作業は不要です。 これで、先ほど挙げた3つの問題は一気に解決します。
NMRパイプテクターは、さらに休業期間と費用面で大きなメリットがあります。 まず、休業期間は不要になります。 NMRパイプテクター®は、空調冷温水配管の外側に装着する装置なので設置工事中の断水は必要なく、通常の店舗営業を維持したまま配管の老朽化対策を行うことができるのです。 次に、費用を大幅に削減することができます。 NMRパイプテクター®の導入コストは、配管更新工事の5~10%で済みます。 このようにアスベストによる問題を一挙に解決するだけではなく、その他にも様々なメリットがあるため、ダイダン株式会社は配管更新の代替手段として、配管の外側に装着するだけで配管寿命を40年以上延長できる配管内赤錆防止装置NMRパイプテクター®を書店へ提案し、導入が決定しました。
NMRパイプテクター®は設置後に必ず効果検証を行います。 ビルディングでは、配管を一部抜き取って調べる抜管検査が、設置から19ヶ月後に行われました。 結果は、配管内面の赤錆腐食は見られず、非常に良好な配管状態でした。 ビルディングは築56年ですが、竣工当時から使用されている空調冷温水配管は現在赤錆のトラブルもなく使用され続けています(2020年現在)。 一般的に配管は耐用年数を超えると指数関数的に赤錆による腐食が進みますので、耐用年数の2倍以上の期間中、全く赤錆のトラブルなく使用され続けているのは驚異的なことです。
アスベストが施工された築後25年以上の建物の多くで配管のメンテナンスが必要になってきている現在、NMRパイプテクター®は配管更新の代替手段として期待されています。 配管のメンテナンスにお悩みのビルオーナーの皆様は、ぜひ一度ご検討下さい。